SLA(第二言語習得論)に言語の転移という言葉があります。
外国語を勉強するときに、どうしても母国語の影響が出てしまうことです。
これは決して悪い影響ばかりでもないのですが、言語の距離が離れているほど悪い影響が出やすくなります。そして、日本語と英語はかなり「遠い」です・・・。
たとえば、以下の間違いは頻繁に日本人がやってしまうもので、しかも、結構誤解を産んでしまう要注意なものです。
Don’tとかAren’tなどで聞かれたときの答え方ですね。
Don’t you do your homework? (宿題やってないの!?)
やってねぇのかよ!!!と、結構怒った風に言われると、ついつい
「いやいや、やりましたって!」
という意味で、
No, No!
って、言いたくならないでしょうか?
でも、それだと、やってないことになってしまいます。
もう一題。
You really don’t like racists.(あなたって、本当に人種差別者は嫌いなんだね)
日本人だったら、ハイ嫌いです、の意味で
Yes
と言いたくならないでしょうか?
でも、ネイティブスピーカーは
No!
と言います。
どうでしょう?すごく変な感じしませんか?
嫌いなんだね~、と言われて、No!だと、「そんなことないよ」
みたいな気がしませんか?そんなことないよ、人種差別主義者、俺好きなんだよね、に聞こえそうなものですが、もちろん、違います。
私は人種差別主義者は嫌いです(I don’t like racists)、の意味でNoです。
なんでこんな違いが生じるのか?
それは、日本語は直前に問われた内容に対して、ハイかイイエを伝えるからです。
でも、英語は直前に問われた内容ではなくて、後に続く文でハイ(Yes)かイイエ(No)を決めます。
問われた内容に関係なく、自分が~だ(肯定文)ならばいつでもYesですし、~じゃない(否定文)ならばとにかくNoなのです。
嫌いなんだね、と言われて、嫌いならばNoなのです。
Don’t you do your homework?(宿題やってないの!?)
と言われて、
No! No!
と答えたら、やってない(I don’t do my homework)ことになってしまいます。
あなたがやった(I do my homework)んでしたら、「Yes」なのです。
これは、何も問答だけでなく、結構ひんぱんに耳にします。例えば・・・
ジャスティンビーバーとデビッドレターマン(有名な司会者)がこんなやりとりをしています。
デビッド:Does mom have a tatoo?(お母さんは刺青あるの?)
ジャスティン:No, she doesn’t.(いや、ないよ)
デビッド:I don’t think so.
さぁ、このI don’t think so. 普通に訳すと「そうは思わないよ」ですが、これはジャスティンがお母さんタトゥー入ってないよ、と直前に言ったことに対して「そうは思わないよ(母ちゃんタトゥー入ってんだろ)」ではないのです。
そうではなくて、英語は否定はあくまで否定なので「彼女はタトゥー入ってないと思うよ」なのです。
「お母さん刺青入ってるの?」
「入ってないよ」
「そうだよな、お母さんタトゥー入ってないよな」
で、これに続くのが
デビッド:Does dad have a tatoo?(お父さんは入ってるか?)
ジャスティン:Yes(入ってるよ)
デビッド:Oh…(マジかよ・・・)
ジャスティンビーバーが10代の女の子にキャーキャー言われるかわいい系なのに、やたら強がって黒人の言葉真似したり、タトゥー入れたりするのをデビッドがからかっているんですね。
それはともかく、YesとNoは結構、日本語と違うところですね。極端な話、日本語でいうところのハイ、イイエではない、と思っておいたほうがいいかもしれません。
Leon